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僕はゆっくり一歩を踏み出した。なんだかこの坂の先によくないものが待ってる気がして気が進まなかったけど、いつまでもここにいるわけにはいかない。そう自分に言い聞かせ、重い足を運ぶ。きれいに舗装されたアスファルトは僕の足音を吸い取っていった。
この得体の知れない気持ち悪さはなんだろう。行かなきゃ、でも行きたくない。どうでもいい葛藤が頭を締め付ける。
さほど距離のない坂は僕の気持ちに反して、それほど歩かせてくれることなく天辺に導いてくれた。
坂の天辺から見えた向こう側の景色は、見渡す限りに広がっていて、そして今まで誰もいなかった空間に確かに人の形をしたものを見つけて、僕は身体を強張らせ、無意識に息を呑んでいた。
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