第二章 対峙

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       8 「君は殺人事件初めてだっけ?」 志津里が突然訊いてきた。 「いや、2回目です。画廊の事件が初めてでした」 「あぁそっか。こないだのね?あれは奥深い事件だったねぇ」 志津里は思い出し変ににやけた。 「私初めてで緊張しっぱなしでしたよ」 「いや、でもよくやってたと思うよ。しかし2回目とは思えない度胸だね。僕が2回目の時は死体なんか直視できなかったよ。報告お願い」 志津里は無駄話が多いが、それが周りの緊張を和らげる。 「被害者は増谷博、34歳。ここの事務所に所属している弁護士です。死因は頭部を拳銃で撃たれ即死だったようです」 「若いのに可哀想になぁ。で死亡時刻は?」 「詳しい事はわかりませんが、昨日の夜9時にここの事務所の弁護士達が近くの中華料理店で食事会していて、9時15分頃に事務所で残業していた増谷さんから電話があったそうです。なのでそれ以降に殺害されたものと思われます」 志津里はシートも被せられてない死体の周りをうろうろしながら「そうなんだ」と素っ気なく返した。 「あと被害者の財布と携帯電話が盗まれています」 その報告も背中で聞きながら志津里はいろいろと観察しては悩みを繰り返していたが質問を返してきた。 「盗られた物は他には?」 「他には被害者のオフィスから裁判関係の資料が盗まれています。でも事務所の他の被害が無いので、被害者に直接恨みのあった人物の犯行と思われます」 なるほど、と言うと志津里は死体を指さし堀谷に疑問を投げ掛けた。
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