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藤井香緒里のオフィスにノックの音が響いた。
「はい」と香緒里が答えると中年の男と若い女が入ってきた。また刑事だ。もう質問には嫌ほど答えた。
「どうも、私警視庁の志津里です。こちらは堀谷君です」
男は丁寧に自己紹介をしたが、そんなの香緒里には興味がなかった。ただ、憧れていた先輩の死に戸惑い、悲しみが続いていた。それでも警察は気を使う素振りを見せながらも何度も傷をえぐってくる。
「同僚のご不幸、お察しします」
さっきの刑事もそんな事言ってた。
「しかし弁護士って聞いてましたけどお若いですねぇ。そこの堀谷君と同い年位だ」
後ろの女は刑事だから大人だとわかるが見た感じスーツを着た中学生位に見える。
「何か訊きたいたい事があるんじゃなかったんですか?お話ならもう他の方に話しましたけど」
刑事達の無神経さに香緒里は苛立ちを隠せなかった。
「すみません、もう一度お願いします。あなた朝早く出社して自分のオフィスに向かう途中で発見されたということでよろしいですね?」
「そうです、いつも私は他の方より早めに行くんです」
「それはどうしてなんですか?」
「勉強の為です。弁護士としては私はまだまだなので裁判の資料を見返したりとか…」
志津里は「なるほど」と言いながらメモを執っていた。
「あと昨夜の事ですが、あなたは食事会は参加しました?」
「もちろんです。そこで増谷さんからの連絡があったので余計にショックでした」
「あっ、電話はあなたがお受けになりました?」
志津里の口調が変わったのが香緒里は気になった。
「いえ、外村所長が電話に出ました。そこで所長から聞きました。」
「そうですかぁ、ありがとうございます。お辛いでしょうがお仕事頑張ってください。」
志津里は微笑み、香緒里と握手をして、香緒里のオフィスを出た。
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