651人が本棚に入れています
本棚に追加
9
外村は所長室で椅子に深々と腰を下ろしていた。
出勤した頃には警察がかなりたむろしていた、元々二階には立ち寄らないが今日は行きたくても行きづらいのではないか。二階にオフィスがある人間は大変だろう。
そんな事を考えていた時、ノックをする音がした。
「誰だ」と言うとドアの向こうから「警察の者で…」と返してきた。外村は部屋に招き入れた。
「はじめまして、警察の志津里というものです。よろしくお願いします。あと彼女は堀谷刑事です」
変わった色のネクタイをした中年の男が自己紹介した。
男も女も刑事っぽくはなかった。サラリーマンと子供みたいだった。
「すみませんお辛いところを…ちょっと二、三お伺いしたいことがありまして」
そう言って男が手帳を取り出す。
「構わないですよ。私でよければ何でも訊いてください。あまりよくは知らないんだが」
「承知の上です。簡単な質問なので。昨夜事務所の皆さんに食事会を開いたそうですね?よく開かれるんですか?」
「まぁ私の時間のある時に開きますが、月に一度位は開くようにしてます。部下とのコミュニケーションとして」
質問の意図がよく分からないがここは正直に答えた。
「増谷さんは昨夜は来られなかったそうですね?残業なさってたとかで」
「彼も多くの仕事を抱えるうちの看板弁護士だったからね」
「だから昨夜は参加できなかった?」
「ええ。」
「いつも欠席なさる時は電話をかけてくるんでしょうか?」
その質問に外村はちょっと引っ掛かった。
「いや、昨日はたまたまかけてきたんだ」
最初のコメントを投稿しよう!