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時計を見た、現在14時08分。外村は現在担当している裁判を終え、裁判所の廊下を歩いていた。
警察がどの様な捜査をしているかは分からないが、とりあえずは思惑通りに動いているだろう。ただ一つ気になるのはあの志津里という刑事だ。奴の語り口は凄く気に触る、マイペースなくせに核心を突いてくる。
そんな事を考えていると、後ろから「先生!」と外村を呼ぶ声がした。振り返えると声の正体は志津里だった。部下の女はいずに一人だった。
「いやいや志津里君、こんな所まで何の用だね」
外村は至って普通に振る舞った。
「いやぁ、事務所に連絡したら先生は裁判中だと聞いたもので。しかし弁護士はかっこいいですねぇ。先生の裁判ではないですが裁判を傍聴してまして…娘にいつも言っているんですよ、将来結婚するなら弁護士か医者にしておけって」
「志津里君、君は何か用があったんじゃないのか?」
外村は志津里の無駄話を一蹴した。放って置けば苛立ちは募るばかりだった。
「そうそう、昨夜増谷さんが先生に電話をかけてきた件なんですが」
まだこだわっていたのか…外村はうんざりした。
「増谷さんは携帯電話でかけて来たんですよね?」
「ああそうだが。だから何なんだ?」
「増谷さん、亡くなってから財布と携帯電話が盗まれているんです。そこで疑問なんですが、犯人はなぜ携帯電話を盗んだんでしょうか?」
「なぜ?私に訊かれても答えが出る質問じゃないだろう?」
外村は志津里がまるで自分が犯人である事を示唆しているような気がした。
「いや、増谷さんと最後に携帯電話で話したのは先生なので…何か増谷さん様子がおかしかったとかありませんか?」
「私と話した時はそんな事はなかった。至って普通だったな」
「そうですか…増谷さんの携帯電話には犯人にとって何か秘密があったとか、心当たりないですかね?」
この質問から外村自身疑われているのかどうなのかと戸惑いを憶えた。志津里の狙いは何なのかがよく見えなかった。
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