第三章 進展

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「わからないな、他の弁護士の担当事件の人間関係までは知らないものでね。しかし確かに携帯電話にも何か重要な意味があるのかもしれない。例えば犯人の知りたかった人物の連絡先が入っているとか」 「なるほど。確かにあり得ますね。今回盗まれた中で金目の物は財布以外ありません。他に盗まれたのは彼の大事な資料ばかりですからね。一風変わった強盗です」 そう言って志津里はメモ帳を取り出したが、ペンが見つからないようだ。 「あれっ、おかしいなぁ。失くすはずないんだけどなぁ」 そう言ってポケットをパタパタさせる姿は滑稽だった。 外村は「なら私のを貸してあげよう」と言っていつも内ポケットに入れてるボールペンを取り出そうとした。しかし内ポケットにはボールペンが無かった。 どこで失くしたのだろう…もしかすると昨夜休憩所のソファーに座って拳銃を内ポケットから取り出した時に落としたのかもしれない。 そんな事を考えていると「あった、ありました。すみませんありました」と志津里が言う。 外村はマイペースな志津里に改めて嫌悪感を抱いた。あと、それにまんまと乗せられる自分自身にも。 「大変参考になりました。ありがとうございます。また何かわかりましたらご連絡いたします。それでは」 「ではまた」 志津里は握手求めたので外村も手を差し出した。そして志津里は去って行った。 外村は何よりボールペンが気になった。休憩所にあるのだろうか?まあ見つけたところで自身の犯行を立証できる代物ではない。とたかをくくった。
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