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「なるほど。仮に増谷君が死んでいたとすると電話で話すのは不可能。しかし私は彼と電話で会話をしている。みんなが9時15分の時点で彼が生きていると証言したのは私の電話での会話を聞いたに過ぎないという事だろ?私が会話をしたふりをすれば死んでいたはずの彼は生きていた事になると」
「そういう事です」
「そうなるとアリバイはなく、死んでいるかもしれない時間に会話をした私が怪しいと」
はい、と自信ありげに志津里は言った。
「ただ、これもこないだと同じく君の仮説を聞いたまでだ」
「と、言いますと?」
「君の話は可能性としては十分にあり得る。しかしそれはただの推測だろう?」
正直奴はこのまま全てを暴くのかとも思った。苦しい立場に立たされるのではないかとも。しかしいささか詰めが甘い、やはり頑張ったところでこの程度だったのだ。
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