第一章 企み

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       4  外村は自宅からゆっくりと歩いて事務所にたどり着いた。現在20時34分、丁度いい頃合いだ。事務所は20時過ぎには完全に誰もいなくなる、しかし今日は増谷が一人残業をしている。 外村は事務所に入り、二階の休憩所のソファーに座っていた。扉はなくただのスペースでここに客は来ないが花を多く飾っている。花好きの藤井君がよく持ってくるのだ。テーブルにはカサブランカが花瓶に活けてあった。 藤井君とはここの女性弁護士で25歳と若いがこれからが楽しみな弁護士だ。9時前には心配して電話がかかってくるだろう。 20時42分、タバコを吸いに増谷が自分のオフィスから出てきた。一旦は身を隠し、増谷が休憩所の手前まで来た時に後ろから声をかけた。 名を呼ばれ増谷はビクッと振り返った。そして外村の手に拳銃が握られている事を確認すると驚愕といった表情を見せた。それが増谷の最後の意識だった。
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