第一章 企み

6/7

651人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
       5 サイレンサーを付けていたので銃声はしなかったが、思ったより血が飛んだ。しかし外村自身には返り血はつかなかった。 自らを正義と信じ大きなものに食らい付こうとした男の哀れな最後だった。そして増谷の亡骸から財布と携帯電話を取り、増谷のオフィスから担当の裁判の貴重資料と思われる物を鞄に詰め、オフィスを荒らした。そして拳銃も鞄に詰め所長室に隠した。 そこで電話が鳴った。藤井君だった。 「もしもし、先生こちらに9時には到着されますか?」 こんなことが起きているとは知らずに楽しみにしていた面々が急かしてきたのか、みんな揃ったのだろう。 「今向かっているところだ。9時には間に合うと思うよ」 外村は何事もなかったかの様に返した。すると「わかりました」と藤井君は言い、外村は電話を切った。 特に気を付ける事もなく、自ら作り上げた犯罪の現場を立ち去った。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

651人が本棚に入れています
本棚に追加