第二章 対峙

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       7 翌日、外村法律事務所には朝早くから警察が出入りしていた。 その中に寝不足気味に現場に入ってきた男がいた。 「志津里さん、おはようございます」 堀谷まり子刑事が挨拶をしたが男は「んっ」と声にならないような返しをして休憩所のソファーに座った。 男の名は志津里警部、警視庁捜査一課の警部なのだが刑事の様な威厳は感じられず、ネクタイのセンスが悪いサラリーマンに見える。 「志津里さん、何だか辛そうですね。コーヒー飲んでください」 「堀谷君ありがとう、気が利くねぇ。いやぁ娘が…娘が今テスト中で赤点になるかもしれないから教えてくれって言われてさ」 志津里は娘の話をよくする。可愛くて仕方ないらしいが愚痴をこぼしているようにも聞こえる事がある。 「何を教えたんですか?」 「数学だよ。僕数学なんか連立方程式で脱落したんだよ」 「中2じゃないですか」 「だからあいつの教科書見ながら朝まで四苦八苦だったよ。これで赤点だったら最悪だね」 「大変でしたね。娘さんおいくつでした?」 「高1だよ。生意気な盛りでね。コーヒー飲んだら少しマシになった、現場について教えて」 志津里はようやく思い腰を上げた。
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