第6章 消えた君

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―何を間違ったんだろう…? 君の姿をした人形が目の前にいるだけで、本当の君はいない…。 「…。」 夏海は何も言わず、ただ静かに俺を見つめた。まるで、人形みたいだった…。 「どうして…?」 俺はそう呟いて、泣いていた。親友を殺して、夏海がもどってくると信じていたのに…。俺の目の前にいるのはただ夏海の姿をした人形だ。 「どうしたの?せっかく大切な人がもどって来たのに…。」 いつの間に来たのか、少女は俺の隣りでそう言いながら、微笑んだ。 「夏海じゃない…っ!夏海を返せっ!約束が…っ」 「守ったじゃない?ちゃんと夏海っていう人間は蘇ったでしょ?」 少女はそう言って、夏海を見た。確かに外見は夏海だ。けど…、夏海という魂は存在してない…。 少女はそんな俺の考えに気付いたのか、静かに微笑んで俺の耳元で囁いた。 「貴方が願ったのよ?夏海を蘇らしたいって。だから、私は蘇らしたじゃない?夏海って人間を…。望まなかったのは、貴方よ…?」 少女は妖艶に微笑んでいた。その時、俺はやっと理解した…。 俺はこの悪魔に踊らされていたという事実に…。 「うわぁぁぁっっっ!!」 「あはは、愚かな人間。なんて愚かで可哀相な人間…。」 もう何も聞こえなかった。俺はもう壊れてしまった…。そんな俺を見て、夏海が静かに微笑んだような気がした…。
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