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―どうすればいい?この罪を償うために…。
あれから俺はただ何もせずに生きた。夏海という人形と共に…。
あの少女はあの日から俺の前から消えた。
「雄二…。」
「…っ!?夏海っ!?」
突然、夏海に呼ばれた気がした。俺は声がした方を振り返るが、そこには無表情の夏海しかいなかった。
「気のせいか…。夏海が俺を呼ぶはずないよな…。」
俺は自嘲した。夏海が俺を呼ぶはずないっと分かっていたはずなのに…心のどこかで夏海が呼んでくれるのを待ってた。
俺はそんな自分が嫌になって、寝ようとした。その時、もう1度夏海の声が聞こえた…。
「雄二…。」
「夏海っ!どこだよ!?」
「ここだよ…、雄二…。」
その声が導くままに俺は見た。
そこにいたのは、俺が求めた夏海が微笑んで立っていた…。
「夏海…?」
「どうしたの?雄二。」
「本当に…」
「変な雄二。私はいつだって側にいたじゃない。」
そう言って、夏海は微笑んだ。俺は嬉しくて、夏海に近付き触れようとした。
「夏海…、俺…」
あと少しで夏海に触れる瞬間、俺は夏海に刺されていた。夏海が持っていたナイフが深く俺に突き刺さった…。
「夏海…っ?」
「痛い?雄二。」
俺は焼けるような激痛の中、夏海に手を伸ばす。夏海は微笑んだまま、俺を見つめていた。俺が大好きだった微笑みで…。
「大好きよ?雄二。これで一緒ね?」
「夏海…。」
視界がどんどん暗くなり、自分がもう死ぬのだと知った。最後の力を出して、夏海に血だらけの手を伸ばした。けれど、夏海はただ微笑んだまま、俺の手に触れてはくれなかった…。
「夏海…愛してる…」
「私もよ?雄二。」
「…夏…海…」
「おやすみなさい、雄二。」
それが最後に聞いた言葉だった…。
これが罪なら受け入れよう…。
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