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ミカエルの時と違って、今度は無表情のまま一言だけ吐き捨て背を向ける。
本来ならば二、三発手痛い一撃を喰らわせてもよかったのだが、今回は初犯という事で一撃で済ませたのはアルヴィスなりの情けだった。
更に本音を言えばウリエルがどうなろうと知った事ではなかった。単に同じ旅に出た途端に幸先の悪い始まりでは今後の旅に影響が出るのは火を見るより明らかだ。
いざという時の為に備えて、ある程度の手助けや稽古くらいなら手伝えるが、ウリエル達とて全く武芸を心得てないわけではない。
本当に万が一の時、すなわち自分やフィレイスがいない状態で戦闘が起きた場合、最終的に自分の身は自分で守るしかない。今回の旅が一筋縄ではいかない旅ならば尚更のこと。それに彼が本気で守り抜く相手は、姉であるフィレイスなのだから。
「……って訳で、こいつがパトロクロス様から賜った星の羅針盤だ」
「これなら座標を定める時に役に立つわね。ありがとうございます、パトロクロス様」
「そんな。お礼される程ではございませんよ……おや、早くも羅針盤に反応が出たみたいですね?」
フィレイスに手渡した星の羅針盤に埋め込まれた宝石達が一斉に輝き出した。どうやら次の世界への扉が開かれたようだ。
「おいお前ら。いつまでそこにいるつもりだ? 早く来ないと置いてくぞ?」
「は~い。今行きっま~す」
「私も、もっとしっかりせねば……」
「やれやれ、父さんや母さん以上にキビしー保護者になりそうですねぇ……まぁ、頼もしい限りですが。行きますよウリエル」
「あぁ……」
――俺は逆に会った瞬間から嫌いだがな……奴の体には、血の臭いがしっかりと染み付いている。![image=445165159.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/445165159.jpg?width=800&format=jpg)
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