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それは薄ぼんやりと幻想的で、それでいて激しく鮮烈な夢だった。
どこからともなく、低く轟く唸りが聞こえる。近いようで遠く、遠いようで近い、不気味で不吉な脈動だ。いかなる者達がいるというのだろう、濃霧にも似た白っぽい闇の中では、判然とはしない。
その闇が、揺らめく。小山のような質量を持った巨大な“何か”が、びりびりと肌を叩くような妖気を放ちながら身を起こした。
厄災を、撒き散らすために……。
それを、止めるためだろうか。次々と、邪悪な闇へと挑んでいく者達がいた。
銃を握る者、翼を生やした者、光の守護で仲間を守る者……。
真っ先に赤々しい輝を放つ剣を閃かせたのは、美しい銀色の髪をした天使の少女だ。吹きつける妖気の圧力で、銀髪を鬣(タテガミ)のように逆立たせ、身に着けた深緑の衣が激しく靡く。翼を有しているせいだろうか、風に乗っているような軽やかな勢いで、雄叫びを上げながら炎のように赤い長剣を振り上げる。
赤い刀身が、まるで少女の内なる活力を映し出すかのように、目映い金赤色(キンセキショク)の炎を纏った。熱が、生き物のようにのたうち“なにか”へと集中した。闇が一瞬だけ、紅く染まる。
飛び散った火の粉を受けながら、少女は険しい表情を浮かべながら地を蹴り、次なる者に場を譲る。
計ったように、無数の煌めきが一点へと渦巻いていった。
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