“旅立ちは突然に……”

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 盾となってその主によって分かれさせられた焔が収まると、全身を焦げ付かせながらも、健在な姿が現れたのは、翼を生やした二人の天使だった。  一人は藤色の瞳に、長い茶髪の青年。もう一人は、銀色の髪をして、三又槍を携えた青年だった。  滑るように“なにか”に迫った茶髪の青年が踏み込むと同時に、半回転しつつ振り抜いた鞭の先端の鋭く淡い光を放つ刃が、風の檻(オリ)と接触した瞬間、鎌鼬となって巻き起こり、その中に囚われていた“なにか”もまた、何百何千という裂傷を表皮に刻まれた。  舞い散る風の中から再び“なにか”の爪が繰り出されるが、今度は二人の天使に向けて突き込まれた三本の爪は、その直前に発された強烈な閃光に狙いを眩まされている。  閃光を放ったのは、黄色い衣を羽織った天使だった。まだ幼さい印象を与える顔立ちとは裏腹に、藤色の瞳は強く輝いていた。  彼女は見当違いの方向に繰り出された腕の内側に滑り込み、健康的な色気を有した優しげな顔で、薄く微笑み、握った拳に力を込め、一気に撃ち込んだ。  拳を撃ち込まれた腕が力無く崩れ落ちると、全員が一カ所に集まり、両手に力を集め、巨大な光の閃光を崩れ落ちる何かに向かって放たれた。  放たれた閃光は、七色の輝きに包まれたまま巨大な何かに直撃すると、闇全体がまばゆい光に包まれた。
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