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翼をはためかせながら抵抗するも、吸い寄せる力は半端ではなかった。もうだめか、とウリエルが覚悟した瞬間、彼の胴回りに鞭が巻かれた。それは、ラファエルの武器であるドラゴンテイルだった。
下を見やると、ラファエルが必死の形相で鞭の柄を持つ。その後ろを他の皆が彼の服を掴み、離れないように耐えながら引っ張るのを手伝っていた。
「だ、ダメだ……もうもたない!!」
「うわあああ!!」
皆の奮闘も虚しく、ウリエル達が穴の中へと吸い寄せられていく。
このまま何も出来ずに闇の中へと沈んでいくのか……。
悔しさと無念が全員の心の中を満たしていく。諦めかけたその時、闇の穴の中に吸い込まれてしまう寸前で光の魔法陣が展開し、彼らはその魔法陣の中へと吸い寄せられていった。
彼らの姿が魔法陣の中へと消えていくと同時に光が消えた。しかし、闇の穴の中へと吸い寄せられていた世界の破片達は深淵の中へと消えた。
世界が、文明が、生命が闇の中へと消え、こうしてこの世界はあっけなく消え去った。
全てを飲み込み終えた“それ”は満足したように厭な笑みを浮かべていた。
「……」
世界が消え、無の空間となった闇の中、二つの光が“それ”を見上げるようにして佇んでいた。
「ローラもみんなも……消えちまった」
「今回は少々遅かったようだ。だが悲観的になるのにはまだ早い」
「あぁ。全てはアイツらにかかってんだもんな……それに、“まだ間に合う”」
佇む者の一人は、行方知れずになっていた剱だった。そしてその隣に立つのは謎に満ちた人物だったがすぐにその人生の姿が消えてしまう。
「……」
――ウリエルの聖騎士を一瞬で無効化したうえに吸収しやがった。やはり、今の段階では完全に破壊すんのは不可能か……。
悔しさを抑えながら、取り残されていた剱の姿も、一瞬にして消えた。
彼らの目的は、誰にもわからないままだ……。
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