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玄関には厚底の女物のブーツにヒールのついたサンダルが脱ぎ散らかされていて、長身であろう桜木龍一の靴は見当たらなかった。
桜木龍一は不在かもしれないが、先程の少女を組織に連れて帰れば利用価値はある。
そんな事を考えながら、家の中へ一歩踏み出そうとした瞬間に人の気配を感じ後ろを振り向く。
「…全く…龍一は靴を脱ぎ散らかすわ、君は人の家に土足で上がろうとするわ、躾のなっていない子が多過ぎるよ。」
溜め息に乗せられ聞こえた声の方向に銃を向ければ、写真で見た顔が目の前に有った。
引き金を引こうとした瞬間に、垂らしたままだった髪の毛を引っ張られ、銃口に鉛の塊を詰められる。
「…っう…」
「綺麗な髪。染色?それとも、先天性色素異常?」
強く髪を引かれ痛みを感じ呻くも、桜木龍一はニタァっと不気味な笑みを浮かべたまま銃を握った手を上から包むように握ってきた。
「嗚呼、小さい時から銃を使っているんだね。若いのに殺し屋さんの手だ。」
ゆっくりと大きな手で銃を握り締めていた指を一本ずつ外されれば、カランっと乾いた音を立て銃が手から零れ落ちた。
桜木龍一の笑みに、先程までの余裕や自身が少しずつ身から削られていく。
「心狼!こーこーろーっ!!早く、早く、マッキンQやっ……きゃーっ!!!!!」
襲い掛かりもしていないのに、脳髄に響き渡るくらいの甲高い叫び声を聞いたのは初めてで、後にも先にも、消毒液のボトルがキャップの開いた状態で後頭部に投げ付けられるのもこの1回きりだった。
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