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「お姉さんの名前は?」
「名前なんて、どうでもいいじゃない」
「答えられないなんて、ますます怪しいぞ」
僕はいぶかしげに、胡散臭い彼女を見つめた。
「残念。貴方なら分かってくれると思っていたのに」
彼女はまた寂しそうな顔をする。
僕は彼女のその表情が気になって、目が離せなかった。
「じゃあ、もし本当に未来から来たというなら、未来から来たという何か証拠を見せてよ」
「証拠?」
彼女は首をかしげた。
「ないのかよ」
「証拠ねぇ。いきなりそんな事言われてもねぇ」
彼女は地面を見つめて考え込む。
「未来から来たんだろう。じゃあ未来に何が起こるか分かるんじゃないのか」
「そりゃあ、私が覚えてる範囲の事なら分かるけど、何せ十年前の事だから記憶が曖昧なのよねぇ。所々記憶が抜けてる感じなの」
「言い訳だけは上手いなぁ。やっぱり、詐欺師か?」
僕がそう言うと、彼女はムッとした表情になった。さすがに十歳年下の高校生に馬鹿にされて頭にきたようだ。
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