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「分かった。そこまで言うなら証拠を見せてあげる」
彼女はそう言って真っ直ぐ僕を見つめた。
僕は思わず身構える。
その時、学校のチャイムが鳴った。
下校を知らせるチャイムだった。
校舎に残っている生徒はもう帰らなければならない。
そういえば姫野はどうしたんだろう?
やっぱり、僕は魔女にからかわれたのか?
「そろそろよ」
気を抜いた瞬間、彼女が口を開いた。
彼女と目が合う。
すると、彼女はゆっくり僕に近づいてきた。
彼女が履いてるハイヒールとコンクリートの地面がぶつかって起きる、コツン、コツンという高い音がだんだん大きくなる。
彼女の白い肌が鮮明になって、なまめかしい程の立派なスタイルが黄昏の夕日に照らされた。
僕は何故か動けなかった。
まるで、金縛りにあったように動けなかった。
彼女の長い黒髪の甘い匂いに気が付くと、同時に、いつの間にか彼女に抱きしめられている事に気が付いた。
「美代子よ」
「え?」
「私の名前」
彼女が耳元で囁く。
その時だった。
屋上のドアが開き、姫野が姿を現した。
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