【職場】

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 幽霊や超常現象のたぐいを安藤は信じない。  だが、ここでは安藤以外の誰しもが見えないものを見ている。  自分だけ見えないのがおかしいのではないか、とまで思えるほどに。  疲労を感じて手を休める安藤の耳に、廊下を走る音が飛び込んできた。 「兄ちゃん!」  中途半端に開けられた障子の間に、職員の一人を呼び止める少年の姿を見る。確かこの仕事場の誰かの息子だったか。
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