secretary

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「はい、かしこまりました。 ではプレゼン用原稿は後程取りに伺いますので」 会社用の携帯で話をしながら、オフィスの廊下を颯爽と歩く。 雑用係と言っても、秘書課という名前の響きは素晴らしい。 憧れの部署であることは間違いない。 今日のスーツは白。 インナーは春っぽくライムグリーン。 ピンヒールのパンプスも白。 髪の毛は仕事の時はフレンチアップと決めている。 話し相手は営業の課長。 話が分かりやすくて仕事がやりやすい。 「えぇ、その件でしたら…」 と前から人が来て脇に避ける。 あれは広報の渡辺部長だから一緒にいるのはきっとお客様だ。 「昨日、桜井に引き継いでます。 あとで報告させます」 電話で話ながら、すれ違いざまにお客様に微笑む。 ん?なんか見たことある顔? 一瞬疑問が頭に浮かんだけど、すぐ何事もなかったように、課長と話しながら廊下を歩いた。 その、お客様の一人が振り返って私を見ていた、なんて全く知らずに…。
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