5人が本棚に入れています
本棚に追加
【雪】
「さぁ、お友達だよ」
引っ越したばかりの土地で独り寂しく遊ぶわたしに、パパは雪のうさぎを作ってくれた。
わたしは外にも出ないで、毎日冷凍庫のうさぎに話しかけた。
そうしたある日、冷凍庫を開けると、うさぎさんが消えていた。
「パパーっ! ママーっ! うさぎさんがいないのっ!」
家のどこを探してもうさぎさんは居ない。わたしはまだ雪の残る表へ飛び出した。
「どうしたの?」
涙目のわたしを見つけて声をかけてくれたお隣の男の子に、うさぎさんが居なくなった事を話した。
「ぼくも一緒にさがしてあげる!」
二人で手をつないで公園まで探したけど、うさぎさんは居なかった。
「うさぎさん……うさぎさん……」
ただ泣きじゃくるわたしの肩を誰かがぽんぽんと叩く。
「はい。これどうぞ」
振り返ると、半分崩れた雪のうさぎを両手に持った男の子がいた。
「雪が降ったら、またぼくがうさぎさん作ってあげるね。だからもう泣いちゃだめだよ」
雪うさぎは、友達を作ろうとしない私を心配して両親が冷凍庫から出したのだ。
おかげで、お隣の男の子は今も私の隣に居てくれる。昔よりずっと上手に作ってくれた雪うさぎと一緒に。
最初のコメントを投稿しよう!