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【雪】 「さぁ、お友達だよ」  引っ越したばかりの土地で独り寂しく遊ぶわたしに、パパは雪のうさぎを作ってくれた。  わたしは外にも出ないで、毎日冷凍庫のうさぎに話しかけた。  そうしたある日、冷凍庫を開けると、うさぎさんが消えていた。 「パパーっ! ママーっ! うさぎさんがいないのっ!」  家のどこを探してもうさぎさんは居ない。わたしはまだ雪の残る表へ飛び出した。 「どうしたの?」  涙目のわたしを見つけて声をかけてくれたお隣の男の子に、うさぎさんが居なくなった事を話した。 「ぼくも一緒にさがしてあげる!」  二人で手をつないで公園まで探したけど、うさぎさんは居なかった。 「うさぎさん……うさぎさん……」  ただ泣きじゃくるわたしの肩を誰かがぽんぽんと叩く。 「はい。これどうぞ」  振り返ると、半分崩れた雪のうさぎを両手に持った男の子がいた。 「雪が降ったら、またぼくがうさぎさん作ってあげるね。だからもう泣いちゃだめだよ」  雪うさぎは、友達を作ろうとしない私を心配して両親が冷凍庫から出したのだ。  おかげで、お隣の男の子は今も私の隣に居てくれる。昔よりずっと上手に作ってくれた雪うさぎと一緒に。  
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