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【風葬】  屋上への扉を開けると、長い髪をなびかせ、両手を広げて立つ女性がいた。僕はタバコに火をつけようとしていた手を止めて、思わずその後ろ姿に見入ってしまった。  タイトスカートから伸びる美しいかたちの足は、黒いストッキングに覆われていて、何となく誰かのお葬式なのかなと思った。  僕の気配に気付いた彼女は、パッとこちらを振り返った。僕は黙って見ていた気まずさを隠す為、タバコに火を付けた。 「すみません」  何に対する謝罪なのかは分からないが、小声で早口に呟きながら彼女は僕の脇をすり抜け、屋上から出て行ってしまった。良い香りをまとった彼女の瞳は少し濡れていた。  彼女が立っていた位置まで行くと、入口では感じられなかった風にタバコを持って行かれてしまった。 「風葬」  ふいに1つの言葉が浮かんだ。誰もいない屋上で独り、やはり彼女は何かを葬っていたのだろうか。  静かに逝く何かを見送っていた美しい彼女の後ろ姿を思い返しながら、僕はまたタバコに火をつけた。  
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