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【猫】 「にゃぁ~」    寂しくて、一生懸命鳴いて訴えているのに、この声は全く届いていない様だ。忌々しいこの檻さえ無ければ、すぐにでもご主人様の足元にすり寄ってみせるのに。   「にゃぁ~っ!」    力任せに鳴いた瞬間、ドアが開いてご主人様が現れた。   「いつまで、にゃあにゃあ言ってるつもりなんだ?」    だってご主人様がいなくて寂しかったんだもの。   「いつまで猫のつもりで俺を呼び続けるんだ?」    だって、私は猫だもの。ずっと側で面倒をみてくれなきゃ駄目よ。   「なぁ、もういい加減にしないか?」    そう言うとご主人様は檻から私を出して抱き締めた。   「おかしくなる程寂しい思いをさせてた俺のせいだよな……サオリ、本当にすまなかった」    抱えられた私の目には、鏡越しに女の人を抱きしめるご主人様が見えた。   「にゃあ……」    私は、私と同じ様にご主人様に抱かれている誰かをぼんやり見ながら、そっと鳴いた。  
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