キャプテン・ローズ

2/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「ご存知ねぇんですかい? キャプテン・ローズは今もその城をアジトにしてるって話ですぜ」    日の光も届かず、常に薄暗い海に、その島はある。島の外れにそびえ立つ城には、キャプテン・ローズと名乗る、一人の海賊がいるという。  赤子の頃に海へ捨てられたのを、老いた海賊に拾われ、その死後、決して沈まぬ船と共に海賊稼業を受け継いだとか。アジトにしている城には、大量の財宝があるという話まである。  だが、その孤島を囲む海流では全ての船が嫌われ、誰一人近付く事が出来ぬ事から、もはや伝説としてしか語られていない。   「キャプテン・ローズが女!? そりゃねぇや。船に女を乗せるのは縁起が悪りぃ。しかもたった一人で海賊やってるって話でしょう? まぁ何にしても気を付けなせぇ、あそこへ向かって戻って来た奴は一人もいないって話でさぁ……」    酒場で聞いた話を思い出した。  いや、確かにキャプテン・ローズは女だった。  夢を見るのだ。もう一年になるだろうか。月光に照らされた美しい銃を両手に携え、こちらを見て微笑む姿。眼帯に隠されていたが、あれは間違いなく女だった。  俺は、あの微笑みを現実にするために舵を取った。  image=223398014.jpg
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!