十代

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10代の話。 俺、中学生の頃先生につけられたあだ名があって、「春」って呼ばれていた。明るい性格って言うには度を超えた明るさだったんで、イカレた奴みたいな意味だった。ホームルームの時間を俺一人の為に提供してもらい、人前で落語を披露したり、コントやモノマネを披露して、いつも笑いを提供していた。 でも人には明るさを見せていても、心から明るくなっていた時なんて、ほとんど無かったんだ。 家に帰ると、ウチにはいわゆるDVが待っていた。小さい頃にはそんな気配が無かったのに、とある事件がウチを変えてしまった。 俺の中学生時代は表面的な明るさと内に秘めた暗さのギャップを抱えたまま毎日を過ごしていた。 俺の当時の担任の先生は、女性で初のエベレスト登頂に成功したチームの一人だった。 男のような体格で、体罰肯定派のその先生は、当初恐怖の対象にしかすぎなかった。 でもこの先生が矛盾を抱えて暮らしていた俺の未来を変えてくれた。 先生は見抜いていた。俺が家庭の悩みを抱え、苦しさを隠すために明るく振る舞っていたことを。 先生はある日を境に何かと気をつかってくれた。先生からの提案で、先生との交換日記も始まった。でも先生に悩みを打ち明ける時、俺はいつも泣くもんかって思っていたのに最後は必ずすすり泣いていたもんだった。 数ヵ月の後、この先生のアプローチが俺の明るさを心からのものに変えていった。 この頃、俺を支えていたもののもう一つに恋があった。幼馴染みのナオミだった。 カワイイ外見だけに惹かれたわけじゃない。幼くして母を亡くし、それでも明るさを失わない姿に俺は共感し、尊敬し、女性としても憧れた。 彼女と帰り道を共にすることも多く、思春期の俺は時々彼女を盗み見ては、気取られぬように、でも内心照れていた。
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