十代

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次の日の部活練習から、俺は気にしないようにはしていたものの、内心意識しまくりだった。 当然部員ですから毎日顔を合わせる。大会前だから、授業時間以外はほとんど顔を合わせる。とにかくやたら顔を合わせる。 ………うーん……… 「先輩、最近なんか元気なくないですか~?😌」 練習後、悩みのタネ本人が話しかけてきた。 意識するまでは全く認識していなかったのだが、この後輩…美人というタイプでは全くないものの、愛嬌のある魅力的な笑顔をする子だった。 名をアサコという。 「別に…大会前でナーバスになっているだけなんじゃないの😔」 「そっかなぁ…なんか違うんだよなぁ…」 ヤバい…小首かしげる仕草はヤバい…カワイイと思ってはイケナイ………… いやカワイイかも… 「先輩、ちょっとお願いがあるんですけド😌」 「……何?」 「型の練習、部活が終わってから付き合ってもらえませんっ?😌」 「型?…ん。いいよ😔」 「やっぱ型の練習、足りてないと思うんですよ😌」 スポーツ空手と呼ばれる伝統空手には、大きく分けて二つの競技種目があった。 いわゆる「組手」は一対一で戦い、顔面から腹部までの範囲に拳や蹴りを入れるポイント制の競技だ。高校生の競技なので、顔面と体にはプロテクター(防具)、拳にはクッション入りのサポーターの着用がルール上義務付けられている。 もう一つの競技はアサコがクチにした「型」で、これは演武とも呼ばれ、競技者一人が広い枠スペースに立ち、あたかも敵に囲まれた状況を打破するかのように「定められた手順により武を演じる」競技である。 型は基本動作・技が力強く正確に、且つ美しく演じることが出来なくてはならない。 俺は組手と型の両方の選手だったが、アサコは殴り合いはイヤっ❗とのことで(じゃ君はなんで空手部に入ったのですか?😓)、型の専門選手として育成されていた。 型の選手はアサコと俺とあと一人(こいつも組手兼務)しかいなかったんで、部活の時間内は組手中心のメニューになる。 アサコの申し入れは、型選手として至極もっともなものだった。
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