十代

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最後のインターハイ予選の日を迎えた… 午前は型の演武が競われ、午後は組手団体戦・個人戦が行われる。 俺は一日中出場することになるが、アサコは午前で出番が終わってしまう。 俺とアサコは同じ会場でありながらも演武場が異なっていた。しかもほぼ同じタイミングで出番がくることが分かった。 つきっきりでいてやることが出来ない。 後輩たちにアサコの応援を任せ、今の俺は自身に集中するのみ… もちろん心配ではあった。 だが俺自身の演武にハンパは許されない。 俺の姿を彼ら後輩たちに残す為に、今は予選組を抜けて決勝まで残る必要がある。 残ればアサコにも雄姿を見せることが出来る。 俺に迷いが消えた。 俺の出番 予選向けに用意した型「セイエンチン」 沖縄空手の流れを残したゆっくりと…だが力強さが要求される型である。 呼吸法の難易度も高い。 俺は無心に近い状態。 緊張は無い。 何千回と繰り返してきた動き。足運び。突き。手刀。受け。払い。 見えない敵がそこに居る。敵をなぎ払うべく、威圧。連打。睨み据える。 最後の敵を打ち払い、呼吸を整え、 そして演武を終えた…。 審判員の号令により、一斉に得点が表示される。 俺の予選通過が決まった。
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