十代

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ようやく明るさを取り戻しつつあった頃、父からウチが引越す事を聞かされた。 内心はイヤだったが、家族であることをもう一度やり直すと言った父にノーは言えない。 俺は同じ埼玉であっても遠く離れて田舎の中学に転校した。 もちろん先の先生もナオミも俺の転校を寂しがってくれた。クラス全員からの手紙ももらい、俺は新天地でも頑張ることを決意した。 待っていたのはイジメだった。街からやってきた優等生には洗礼が必要だったようだ。 自転車で30分の通学だったが、毎日タイヤがパンクしていた。 机の中にはカエルや残った給食のパンが入ってたりした。 家族は徐々に明るくなっていったが、俺は別の悩みを抱えることになった。 俺は転校先の学校で耐え続けた。自転車がパンクさせられるなら、歩いて通えばいい。 一時間以上の通学時間になったが、屈したくなかった。 やがてそれを見かねたように、帰り道を付き添ってくれる友人が出来た。 一人はケンカがやたら強いと言われていたヤツ。一人は女の子にやたらモテてるヤツ。 女の子の一人も俺に付き添ってくれるようになった。 この頃の俺には全く予想も出来なかったが、この女の子は10年後、結婚を申込み、そして破局を迎えることになる。 俺に心強い仲間が三人も出来た。これがきっかけとなり、俺は徐々にみんなに溶け込んでいった。明るさを取り戻した俺は、自分らしさをようやく表現出来るようになり、半年後には生徒会副会長に当選するまでになっていた。
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