十代

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平穏な高校1年生が終わろうとしていた頃、小学生時代の同窓会の話が上がった。 もちろん参加だ。 そこにはナオミが現われることが予想される。 そして同窓会当日。 俺は3年ぶりにナオミに会った。 長い黒髪は金髪のボブに。素直な笑顔はヤケに慣れた化粧顔に。 俺の初恋の人はもうそこには存在していないようだった。 俺は信じていた。ナオミはそんな子じゃない。俺は幼馴染みだ。よく分かっている。 俺はナオミに声をかけ、同窓会を抜け出し、会話を試みた。 「変わったな。元気だったか?」 気の利いたことの一つも言えない。 「変わったかもね。色々あったし」 俺は深く彼女の心に入っていけなかった。怖かった。 それから近況などたわいもないことをずっと話していた。 「またな。元気でな。」別れ際にナオミは言った。 「あんたがいたら、こんなんなってなかったかもね。」 もしかしたら、その言葉は俺が一番聞きたかった言葉であり、一番聞きたくない言葉だった。
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