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森の中に少しだけ拓けたところがあり、そこに小さな祠があった。
今は管理する者がいないのだろう。祠はすっかり寂れて全体が朱色で染められていたであろう壁はほとんどが剥げてしまっていた。
不意にひんやりとした心地よい風が吹いた。
私の左目が青く変化する。
『このような場所、無理して来んでもよいのに……。菓子が転がっている様な良い場所ではないぞ?』
少し呆れた口調の声が耳に響く。
「私は拾い食いなんてしません。それに飢えてないし」
むしろ私は小食だ。
「だってさ、もう一回来てみたかったんだよ。ゆらめと出会ったこの場所」
そう、ここはゆらめと初めて出会った場所だ。私の中に居る、妖怪の『雪女』と。
居るというよりは後ろで見守ってくれてる感覚なんだけど…このことは誰にも秘密ね。
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