†恋いしくて†

4/10
前へ
/187ページ
次へ
ピピピピピッ――…。 携帯のアラームが君のいない朝を告げた。 重たい意識の中起き上がり、眠たい瞳を擦ってカーテンを開ける。 いつもなら眩しい朝日が部屋を照らすのに今日は違った。 空いっぱいの灰色が僕の瞳を映した…。 「ああ…、雨か――……。」 僕は窓を開けて空を眺めながら呟いた。 雨の独特の匂いが、僕と部屋を寂しく包み込む…。 僕は窓を閉め、着替えて仕事に出掛けた。 素っ気ないビニール傘を開いて、電車までの道のりを歩く。 ふと、顔を上に上げると、君と同じ傘をさした人が僕の横を通り過ぎて行った。 僕は驚いて目を見開き、急いで振り返った。 もちろん、その傘をさしていたのは君じゃない……。 僕はそんなの当たり前だと分かっていたのに、ただ悲しみが心を埋めていった――…。    
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

279人が本棚に入れています
本棚に追加