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ピピピピピッ――…。
携帯のアラームが君のいない朝を告げた。
重たい意識の中起き上がり、眠たい瞳を擦ってカーテンを開ける。
いつもなら眩しい朝日が部屋を照らすのに今日は違った。
空いっぱいの灰色が僕の瞳を映した…。
「ああ…、雨か――……。」
僕は窓を開けて空を眺めながら呟いた。
雨の独特の匂いが、僕と部屋を寂しく包み込む…。
僕は窓を閉め、着替えて仕事に出掛けた。
素っ気ないビニール傘を開いて、電車までの道のりを歩く。
ふと、顔を上に上げると、君と同じ傘をさした人が僕の横を通り過ぎて行った。
僕は驚いて目を見開き、急いで振り返った。
もちろん、その傘をさしていたのは君じゃない……。
僕はそんなの当たり前だと分かっていたのに、ただ悲しみが心を埋めていった――…。
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