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僕は仕事にひたすら打ち込んでいた。
君のことを思い出してしまわぬように…。
まわりに迷惑をかけてしまわぬように…。
「じゃあな。」
「また明日っ!!」
「お疲れ様です。」
仕事が終わった僕はみんなに手を振り別れて、電車までの道を歩いた。
まだ雨が降っていることに嫌気をさしながら…。
夜23時――……。
もう人はまばらで静けさが漂い、冷たい風が僕の頬を撫でた。
ホームに着くと、昼間とは大違いだった。
次の電車が最終。
座ってぼーっと電車を待っていると、遠くで同じ電車を待つカップルがいた。
二人は離れたくないのか、ずっと手を繋いでいた……。
ふと胸が締め付けられた。
僕たちにもあんな日があったなあ…
そう思いながら…。
僕たちも離れるのが苦しくて、寂しくて…。
君のあの手を放したくなくて…
ああ…
また僕は君を思い出してる…。
悲しくなって僕は上を向いた。
僕のかわりに空がまだ泣いている…。
雨という涙が…。
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