24人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「あ、英語通じるよね?」
蘇芳は塀の上に上り、しゃがみこんでいた。
不審な外国人の後頭部に向けて話をしている格好になる。
「ホールドアップ、して欲しいんだけど」
外国人は慌てて両手を上げた。
「あれ?もしかして日本語通じる?」
蘇芳はラッキー、と言わんばかりの暢気な口振りである。
「わかるなら解らない振りなんかしないほうが話は早いよ?
アラビア語も、スペイン語も堪能な便利な人間を呼んだからさ。そろそろ到着する頃だし」
「・・・クソガキ」
外国人は吐き捨てるように応じた。
「教科書には絶対載ってない言葉だよな。」
さも感心したようである。
「じゃ、三歩前へ出て」
指示通り男が動くと、塀の上からひょいと降り立つ。
「身体検査させてもらうよ。どうせ物騒なモノ持ってるんだろ?」
案の定、すぐに黒光りする金属を探り当てることが出来た。
梅雨も明けた時季に、汗を噴き出しながら厚着していた訳がこれだ。
「こんなん持ってたら、Tシャツ一枚じゃ都合悪いよな」
オマケに防弾着。
銃をアーチェリーケースのポケットに放り込みつつ、
「そういう目で見てりゃ、不審に思うさ、流石に」
「何者だ、お前。ただの高校生じゃないな」
最初のコメントを投稿しよう!