追跡者

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「あ、英語通じるよね?」 蘇芳は塀の上に上り、しゃがみこんでいた。 不審な外国人の後頭部に向けて話をしている格好になる。 「ホールドアップ、して欲しいんだけど」 外国人は慌てて両手を上げた。 「あれ?もしかして日本語通じる?」 蘇芳はラッキー、と言わんばかりの暢気な口振りである。 「わかるなら解らない振りなんかしないほうが話は早いよ? アラビア語も、スペイン語も堪能な便利な人間を呼んだからさ。そろそろ到着する頃だし」 「・・・クソガキ」 外国人は吐き捨てるように応じた。 「教科書には絶対載ってない言葉だよな。」 さも感心したようである。 「じゃ、三歩前へ出て」 指示通り男が動くと、塀の上からひょいと降り立つ。 「身体検査させてもらうよ。どうせ物騒なモノ持ってるんだろ?」 案の定、すぐに黒光りする金属を探り当てることが出来た。 梅雨も明けた時季に、汗を噴き出しながら厚着していた訳がこれだ。 「こんなん持ってたら、Tシャツ一枚じゃ都合悪いよな」 オマケに防弾着。 銃をアーチェリーケースのポケットに放り込みつつ、 「そういう目で見てりゃ、不審に思うさ、流石に」 「何者だ、お前。ただの高校生じゃないな」
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