the Embodiment of Scarlet Devil.③

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「只今戻りました。マクスウェル司教」 ヴァチカン教皇領の一角にて、アンデルセンは真面目な面持ちで言った。 「…遅いではないか、アンデルセン」 それに対し、マクスウェルはやや苦々しげに言った。その手には彼の愛用の眼鏡が握られていたが、今にも粉々に潰してしまいそうな勢いだった。 「はい、少々異常が発生致しまして……なに、問題ありません」 口端を僅かに吊り上げ、アンデルセンは返した。その回答は明らかに説明不足であったが、事細かに講釈したとしても、その半分も理解されないだろうと思っての事だった。 「……まあいい、アンデルセン、お前に新しい任務を与える。ロンドンは王立軍事博物館に行く、同行しろ」 「……ほう」 マクスウェルはやや呆れた様子で言い、アンデルセンはそれを聞いて双眼を見開いた。 「ヘルシングと、何か関わりのある事ですか?」 アンデルセンは、その最も興味を持つ事項について尋ねた。マクスウェルは、相変わらず渋面を作ったまま彼の方を向いて答えた。 「……そうだ、連中を呼んである。ボディーガードだと思ってくれればいい」 「なるほど……クク、やはり私は恵まれているようですな」 アンデルセンは僅かに下を向いたかと思うと、例の笑みを浮かべ、身体を揺すって笑い始めた 「………」 マクスウェルはそれを見て遠い目になり、冷や汗を垂らし始めた。 「クカカカカ……吸血鬼どもの相手は、私にお任せ下さい」 「ハッハッ…期待しておくぞ…(やはり猪武者か……)」 二人は対照的な笑みを浮かべ、その笑い声は廊下を通じ反響していった。 ロンドンのヘルシング機関本部が、グールの部隊に襲われた後の事だった……。 ───── 「……ふんふん、やはりそんな気がしていたけど……」 天狗の手になる、幻想郷の数少ない報道誌『文々。新聞』を広げつつ、紫色の服に、白い帽子やリボンで着飾った妖怪『八雲紫』は言った。 「紫様、ご存知だったのですか?」 その奥から、九つの尾を携えた紫の式神『八雲藍』は、不思議そうに尋ねた。 「まあ……最近、外の世界の方に行ったでしょ?その時境界を弄ったら、何か違和感を覚えたんだけど、まさかこうなるとはねぇ」 紫は『紅魔館に謎の殺し屋出現!?』なる記事を一心に見つめつつ答えた。 「要するに境界の錯乱でしょ。しかし外の世界にも居るとはねえ」
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