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「物分かりが良いな、女吸血鬼(ドラキュリーナ)。楽しませて貰うぞ」
アンデルセンはそう返した。その言葉を聞き、咲夜は彼へと敵意を剥き出しにした視線をぶつけた。
「そうはさせません!」
咲夜は力強く言うと、彼女の得物であるナイフを抜き去り、アンデルセンに向け、それらを次々と投擲した。
「ほう…」
それに対し、アンデルセンは神父服の内側から八本の銃剣を抜き去った。彼は、それを四本ずつ両手に備えると、咲夜と同様に投擲した。
ナイフと銃剣、二種類の凶器は二者間で交差し、互いに接触、相殺していった。刃と刃が甲高い音と火花を散らして弾け合い、その周囲の床や壁に突き刺さっていった。
「…貴方も、只の人間ではないようね…なら!」
「下がりなさい、咲夜!」
「お嬢様!?」
急に、レミリアは立ち上がり、咲夜を押し退けるようにしてアンデルセンの前に立った。
「『レッドマジック』!!」
レミリアが叫ぶのと同時に、彼女より、大小様々な緋色の球体が放出された。それらはアンデルセンの投擲した銃剣の本数より遥かに多く、彼の身を次々と貫いた。
やがて、その弾幕が止んだ頃、アンデルセンは壁へと吹き飛ばされており、その全身からは深紅の液体が次々とこぼれていた。
「……よろしいのですか?お嬢様……今の攻撃はスペルカードのルールを……」
咲夜はアンデルセンを構成する肉塊から目を背けると、動揺したような口調で言った。
「咲夜……彼、私達を本気で殺そうとしたのよ?構う事はないわ。……それに、『事故』は予期せず起きるものよ」
レミリアは淡々と言い放った。
本来、博麗の巫女が考案したスペルカードによる決闘は、相手を意図的に殺す為のものではない。それを破る事は、幻想郷でのタブーに当たり、咲夜の心配ももっともと言えた。
「……とんだ邪魔が入ったわ。咲夜、それを片付けておいて頂戴」
「……はい」
しかし、レミリアの意見にも納得する物があった。それ以上に、彼女に対する忠誠心から、咲夜は反対することはなかった。
咲夜は命令通り、アンデルセンへと近寄った。しかしその時、彼の四肢がピクリと動き、突然に飛び起きた。
「……まさか!?」
「ククッ…クカカカカカカ!!」
咲夜、そしてレミリアは、奇声を上げつつ再び立ち上がったアンデルセンを見て、流石に驚きを隠せなかった。
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