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「くっ…『クロックコープス』!」
咲夜は再び無数のナイフを投げた。しかしその直後、ナイフの軌道が瞬間的に変わった。彼女の『時間を操る』能力によるものであった。
そして、それら弾幕の如きナイフの群れは、アンデルセンへと容易く突き刺さっていった。
アンデルセンは背中から倒れ込んだが、床に着く前に手を伸ばして受け身を取り、再び立ち上がった。
「AMEN」
アンデルセンは狂ったような笑顔のまま走り出し、レミリアに向け銃剣を次々と投げつけた。
「お嬢様!『ミスディレクション』!」
「咲夜!?」
咲夜はレミリアの前に立ち、ナイフを抜き去って、銃剣を弾くように広範囲にばら蒔いた。
「そこをどけ、小娘。邪魔をするなら貴様も殺す」
アンデルセンはそう言い切ると、床を踏み切って飛び上がり、空中から一斉に銃剣を投擲した。
「!!」
その内の一本が、ナイフの弾幕を掻い潜り、咲夜の左脇腹を掠めた。その傷口から鮮血が飛び散り、彼女の弾幕に乱れが生じた。
そればかりか、更に投擲された銃剣はレミリアへと一斉に襲いかかり、彼女の羽を貫き壁に刺し通した。
「なんなのこれは……うっ…!!」
レミリアは、苦悶の表情を浮かべた。その銃剣に刺された痛みだけではなく、そこから体が溶けていくかのような、謎の苦しみを覚えたのである。
「DUST TO DUST……終わりだ化け物、大人しく狩られろ」
アンデルセンはそう言いながら、両手に銃剣を握りしめ、ゆっくりとレミリアに近付いていった。
その口端は相変わらずつり上がっており、眼鏡は異様な輝きを放っている。その形相は、見る者全てに恐怖を与えるのに十分であった。
「くっ…こんな……!」
「お嬢様…!」
咲夜は、今にもレミリアに斬りかかり、その首を落とそうとするアンデルセンを睨んだ。彼女はそれを注視し、脇腹を抑えていた左手を離してナイフを握らせた。
「させない!!」
咲夜は覚悟を決め、気を集中した。時間を止め、アンデルセンの急所へとナイフを突き立てようとしたのである。
咲夜は叫ぶと、銃剣を振り被るアンデルセンへと駆け寄った。
「『クランベリートラップ』!!」
しかし、咲夜が時を止める必要は無かった。突然に放たれた弾丸が、銃剣を粉々に破壊したのだった。
「何…!?」
アンデルセンは表情を歪めつつ、弾丸が放たれた方を向いた。
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