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そこには、金髪に白い帽子を被り、七色に光る独特の羽のようなものを背中に生やした少女がいた。
彼女は、外見相応な笑みを浮かべていたが、状況が状況だけに、逆にそれが恐ろしく感じられた。
「……フラン!?」
レミリアは少女に向け、驚きを含んだ様子で言った。咲夜も同様に、呆気にとられたような表情を浮かべている。
「おまたせ」
そう言うと、フラン──レミリアの妹、フランドール・スカーレット──はその右手に、燃えたぎる剣、或いは杖のような物を握らせた。
いたいけな姿の彼女がそれを携えているというのは、極めて異様な光景であり、その照り返しを受けてか、彼女の顔もどこか妖しげに光っている。
「ちょうどいいわ、フラン!こいつを本気で殺しなさい!!」
レミリアは相変わらず苦痛を顔に出しながら、フランに言いつけた。
「当たり前だよ。お姉ちゃんを殺すのは私なんだから!」
フランは不穏当な台詞を吐きつつ、口角を上げ、右手を振りかぶった。獲物を見つけた炎が揺れ、悦んでいるかのように勢いを増した。
「『レーヴァ……』」
「なるほど、今の状態では対処出来ん」
その時、アンデルセンは一冊の分厚い本をどこからともなく取り出した。彼があるページを開くと、その紙が彼の周囲を覆った。
フランドールは構わず右腕を大きく振ったが、奇妙な事に、その紙の壁を炎が越える事はなかった。
「また会おう化け物共」
徐々にその層は厚みを増し、発せられる光がアンデルセンを覆っていった。
「次は皆殺しだ」
そう言うと、光が猛烈な勢いでアンデルセンを隠し、その場に居た三人は空間が割れたような錯覚を覚えた。
「なっ…!」
咲夜は驚きを隠せず、声を上げた。レミリアとフランドールは声こそ上げなかったものの、相当な驚きを覚えた事は間違いない。
そして光が収まった頃、アンデルセンと、それ覆っていた本のページは全て消えていた。
それを、三人は呆然として眺めていた。
「……消えちゃった」
フランドールはつまらなそうに呟き、炎を消した。
「……お嬢様!大丈夫ですか!?」
はっと我に返った咲夜は直ぐ様レミリアの下に駆け寄り、彼女の羽を貫いていた銃剣を抜きにかかった。
「まったく、もう……痛っ!!」
レミリアは咲夜が銃剣を抜くたび、悲鳴を上げた。
その跡には痛々しい孔が残されていたが、『ヴラドの末裔』を名乗る彼女ならば、再生は容易いことだった。
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