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「今だ!」
法明は、退魔の太刀を拾うと、素早く鞘を抜き、女郎蜘蛛に突進した。
「やめてー」
「何ー?」
法明の太刀が、女郎蜘蛛を庇い、立ち塞がった志乃の体を貫いた。
「志乃さん、なぜだ」
法明は叫んだ。
「ご、ごめんなさい。この妖怪は、私の母上なのです」
志乃は、最後の力を振り絞り、真実を伝えた。
「志乃さん、では、あなたも…?」
法明は志乃に問い掛けたが、静かに息を引き取った。
「そんな、ことがあるのか!えーい、妖怪め、許さん!!」
法明は、志乃の足元に落ちていた、退魔の弓矢を拾うと、退魔術毒牙の矢を放った。
「ギャー」
女郎蜘蛛は、段々と毒に侵され、ついに力尽きてしまった。すると、不思議にも、女郎蜘蛛の姿が人間の美しい女になっていった。
「これは一体…」
法明は戸惑いの表情を見せた。
「やはりそうだったか」
1人の男が近づいてきた。
「志乃さんの母親は10年前に姿を消していたのさ。女郎として働いて女手1人で志乃さんを育てていたんだが、ある日、お客として来た、怪しい男といなくなったのさ。そして、2年前から、この界隈に女郎蜘蛛として現われ始めたのさ。誰かが母親をあんな化物にしたんだよ。許せないよ」
男は、哀れみの表情で話した。
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