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「誰が一体…」
法明の顔は悲しみから、怒りの表情へと変わっていく。
「たしか、闇夜野妖死郎とかいう若い武士だった」
「何?」
と、その時、法明の前に何やら、幻らしきものが浮かび上がった。
「うん?」
法明は息を呑んだ。
その幻が段々と、はっきり見えてくると、法明の目が血走ったのである。
「お、お前は…。バカな!あの時死んだはずでは…」
幻が実体化し、闇夜野妖死郎の姿へと変貌した。
「久しぶりだな、法明。わしは不死身だ。この女は、わしがこしらえた可愛い奴だったが、どうだ、女を殺した気分は?」
妖死郎は、法明をあざ笑った。
「貴様は、どこまで悪党なんだ。許さん!」
法明は、〈退魔の太刀〉を振りかざし、斬りかかるが、妖死郎の姿は、すばやくその場から消え去っていった。
「ワハハッ。法明よ、よく聞くがいい。わしは、人界を支配するためには、手筈は選ばん。わしこそ、魔界の王だからのう。また、いつか会おう。ただし、その時が貴様の最後だ」
熱気漂う河原に響き渡る、妖死郎の笑い声を耳にしながら、法明は、心の中で、闇夜野妖死郎の首を討つためには、何があって死なないと、固く決意した。
そして、志乃と母親の墓を作ると、再び、宛のない旅へと出たのである。
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