退魔師のさだめ

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邪鬼丸との死闘の末、深手の傷を負った法明は、倒れこんだまま、静かに体を休めていた。退魔師は、太陽の光を浴びることですべての傷を治す特殊な能力があり、法明は、ただひたすら朝が訪れるのをジッと待っているのであった。 「そ、そうだ。婆さんと小太郎は、どこへいった…」 2人の姿が見えないことに気付いた法明は、焼け崩れたお伊佐の家を目の当たりにし、自分を責めた。 『退魔師に関わる者は必ず不幸になる』 退魔として生まれたからには、人の世に染まることなく、関わりを持つことなく生きていくことが宿命なのである。 法明はこれまでのことを振り返った。 とある村で悪事を働き死んでいった野武士たち、野武士の手から助けることができず死なしてしまった村の娘。志乃と女郎蜘蛛にされた母親。 そして、今度は何の罪もない老女と孫… 「くそー、みんな私のせいだ」 法明を力のない声で嘆いた。 時は刻々と経過し、東の空が段々と明るくなり、太陽が昇り出してきた。 すると、法明の手の中にあった、〈退魔の守り札〉に縫い付けられた退魔一族の金の紋章が、日の光を浴びて、眩い黄金に光り輝き、法明の体の傷を癒していくのである。 「よし、これで動けるぞ」 瀕死の状態から回復した法明は、退魔の掟に背き、人々と関わったことに、微塵の後悔もせず、赤い血の流れる心の通う1人の男として、生きていくことを決意すると共に、人々を不幸に陥れる、悪の妖怪を1匹残らず殲滅することを誓った。 「あの2人を捜さなければ!」 と、足跡を便りに行方を追った。 その頃、あてもなく、歩いていくお伊佐と小太郎は、山の麓の雑木林で、一つ目爺の大群に襲われていた。 「えーい。来るな!あっちへいけ!!」 お伊佐は、杖を武器に迫り来る一つ目爺を追い払うが、一向に立ち去る様子はない。 「ばばぁー。無駄な抵抗はよせ。そのガキをよこせ」 妖怪の狙いは小太郎であった。 「ばあちゃん、こわいよ」 泣き叫ぶ小太郎。 「泣くな、小太郎!ばあちゃんがついているぞ」 お伊佐は必死に、一つ目爺に対抗した。 その時、一つ目爺が、次々と射抜かれていった。法明が、2人を助けにきたのだ。 「大丈夫か」 法明は、2人に駆け寄ろうとしたが、 「来るな、あんたと関わったためにこんな目に遭ったんじゃ。小太郎よ、こうなったのも、目の前にいるこの男のせいじゃぞ」 お伊佐の怒りは、凄まじいものであった。
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