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また、今日もどこかで、醜い争いが巻き起こっていた。
時は、承天3年8月のことである。日之出国は、今、戦乱の世と化していた。
国土全域を手中に治めんと企む、鬼経の国の統治者、闇夜乃妖死郎が、次々と近隣の国々に兵を送り込み、侵略を繰り広げているのである。
実は、妖死郎は人間の姿をした妖怪であり、彼が率いる軍団も、人の皮を被った妖怪たちであった。
今、ここ、浅川平野では、闇与野軍と神楽乃国の南郷十坐率いる軍団が、激しい死闘を繰り広げていた。
「えーい!今日こそ妖死郎の首を取ってくれる」
勇ましい雄叫びを上げ、次々と闇与野の兵を斬り裂く、南郷十坐であったが、やはり、妖怪には太刀打ちできなかった。
多くの家来が、妖怪変化した闇与野勢に殺されていく。まさに地獄絵図に描かれたような光景であった。
「十坐よ。死ぬのはお前だ。神楽乃国は、わしが頂く!」と、勝ち誇ったのように妖死郎は叫んだ。
「おのれー。貴様の好きにはさせん!いくぞ!!」
十坐は刀を振りかざすと馬を突進させた。
「おりゃー」
シャキーン
一瞬の出来事だった。
勢いよく妖死郎に斬りかかっていった十坐であったが、通りすぎた直後、ピタッと動きを止めると、首を斬り落とされてしまったのである。
「バカな奴だ。貴様ごときに倒されるわしではないわ!」
妖死郎は兵を従えて神楽乃国への侵攻を開始した。
が、その様子を、小高い丘の上からジッと眺めていた一人の若い男がいた。
その眼差しはまさに獲物を狙う鷲のように鋭く、背中に背負った矢袋から一本の矢を取り、弓に装填すると、照準を妖死郎に定めた。
キリキリキリ…
男は、弓糸を力いっぱい引くと、一気に放した。
シュン!
放たれた矢は妖死郎に向かって飛んだ。
「うん?」
妖死郎は矢に気付くと、飛び上がり矢を交わした。
交わされた矢は一人の兵士に刺さると、おぞましい悲鳴とともに紅蓮の炎に包まれ、燃え尽きた。
「だ、誰だ!」
宙返りし、着地した妖死郎の前に、男が姿を現した。
「お主、何奴?」
妖死郎は睨み付けながら言った。
男はその問いかけに、不敵な笑みを浮かべながら、答えた。
「フフフッ…。お前たちを葬るために産まれてきた男さ」
男は、そう答えると腰の刀を引き抜き、次々と兵士たちを斬った。
「冥土の土産に教えてやろう。俺の名は、退魔師、弓内法明さ」
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