退魔の者

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「ば、ばかな!退魔一族は、10年前に亡びたはず…。なのに、なぜだ!!」 妖死郎は、表情を強ばらせて言った。 「確かに一族は貴様たち妖魔によって殺された。俺は、退魔の血を引く最後の人間なのさ」 法明は、誇らしげに大声で笑いながら叫ぶと、腰に下げた、〈退魔の太刀〉を引き抜き、身構えると、 「いくぞ!人の皮を被った悪魔ども」と、叫び、妖死郎に斬りかかった。 「させるか!」 妖死郎も刀を引き抜き、法明の攻撃を受け止めた。 「くそー」 法明は、力の限り、妖死郎を押し倒そうとするが、やはり、妖魔との力の差で、逆に押し返された。 「今度は、こちらからいくぞ」 妖死郎は、刀を上段に構えると全身から紫の妖気を発して、法明に斬りかかった。 カキーン! 刀と刀が勢いよくぶつかり、凄まじい火花が散った。 「おのれー」 法明は圧倒的に力負けしており、苦戦を強いられるが、一度、引き下がると、〈退魔の弓〉を構えた。 「お前の最期だ!」 法明は〈退魔術炎魔の矢〉を妖死郎目掛けて射ち放った。 「ギャー」 〈炎魔の矢〉は、妖死郎の心臓を貫くと、煌々と燃え広がり妖死郎の体を焼き払った。 「妖怪ども! これが戦いの始まりだ。貴様らを最後の1匹も残らず始末してやる」 弓内法明、御歳22歳。 今は亡き、退魔一族の血を引く唯一の男である。 弓内法明は、一族を亡き者にし、日之出国(ひのいづるくに)の平和を脅かす悪の妖怪を討伐するため、明日なき道を流離い歩くのであった。
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