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「妖怪め」
法明は相手が空を飛ぶ蝙蝠であるとこから、〈退魔術疾風の矢〉を使うことにした。
野武士の血の臭いを追って1匹の闇蝙蝠が法明の目前に姿を現した。
そして、法明を見るやいきなり襲い掛かってきたのである。
「うわぁ」
法明の右の肩口が、闇蝙蝠の鋭い爪で切り裂かれ、赤い血が噴き出した。
その血の臭いに釣られて森の中から次々と無数の闇蝙蝠が飛び出し、法明を取り囲んでしまった。
「くそー。これで終わりか…。無念」
その時である。野武士たちが法明に斬りかかった。
「死ねー。若僧」
しかし、それが法明に、逆転の機会を与えた。法明は野武士の攻撃を避け地面にうつ伏せになると、闇蝙蝠たちは、立った姿勢の野武士たちに襲い掛かった。
「た、助けてくれ」
「ギャー」
法明は転がるように包囲網を脱出すると、〈退魔術疾風の矢〉を放った。
すると不思議にも1本の矢が、何十本、何百本にもなり、群がる闇蝙蝠を次々と撃ち落していった。
「やったぞ!」
法明は見事、闇蝙蝠を成敗したのだ。
が、野武士たちは辛うじてまだ生きている。法明の怒りの炎はまだ消え去ってはいない。
「妖怪は倒した。今度はお前たちを倒してやる」
「や、やられてたまるか。死ぬのはお前のほうだ」
「おりゃー」
野武士たちは一気に攻撃を仕掛けてきた。法明は天高く飛び上がると、弓矢で野武士たちを射ち倒した。
「く、くそー」
矢を射られた野武士は苦しむことなく死んでいった。
「ばかな奴らだ。しかし、これも、この戦乱の世、そして妖怪たちのせいだ。私は必ずこの世を変えてやる」
そう言い残し、村を後にし、あてのない道を歩き出した。
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