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「師範が心配しておられるんですよ。
前に私が熱を出して迎えに行けなかったとき、藍花様は寝過ごして稽古に来なかったでしょう。
一人で放っておかせたら、また起きられない時があるのではないかと思っているのです」
「呆れた、そんな昔のことを言っているの。私はもう15になったのよ。
それに誠一、前々から何度も『様』付けだけはやめてってお願いしてるじゃない。あなたは私より年上なのに」
「すみません、性分ですので。何とぞお許しを」
にこりともしないで誠一は頭を下げた。
そのすぐ謝る行動も藍花の機嫌を損ねてしまう理由の一つなのであるが、誠一は全く気付いていない。
そんな態度に、また藍花は何か言おうとしてー…やめた。
誠一が一度こうなるともう何を言っても無駄である。あとは結局、『すみません』を繰り返すだけなのだから。
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