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「だって、京一が神隠しを普通だなんて言うから・・・」
理佳はまだクスクス笑っている。
「11歳の時、あんたが老人の所で、初めて袖掴神を見た時のこと憶えてる?壁から出てきた白い手を怖がって、ワンワン泣いちゃったのよね。ついでに下まで濡らしちゃって」
「言うな」
俺は黙らせようと睨むが、理佳は黙らず、楽しそうに続ける。
「私がズボンを替えてあげて、代わりに老人の裾を踏んであげたのよ」
「だから、言うな」
「そのあんたが、神隠しを普通だなんて言うから、おかしくて」
「今の俺はあの時の俺じゃない。もう5年も経っているんだ」
「そう、それもおかしくて。あの可愛かった男の子が、いっぱしの少年になっていく。楽しくて、おかしいわ」
「俺に言わせれば、あの優しかった女性が、酒飲みの強突張りに変わっていく。虚しい限りだ」
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