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「くそ」
俺は毒づきながら階段を駆け降りる。
最後の授業で眠りに落ち、気付けばとうに放課後は過ぎていた。もう部活でさえ終わる時間だ
校舎内は暗く、人気はない。
起こしてくれなかった級友たちを恨みつつ、俺は昇降口にたどり着いた。
(ん?)
その級友の一人が、そこにいた。
いや、彼女に関しては級友と呼べるかどうかさえわからない。彼女が転校してきて1ヶ月、人と話しているところを見たことがない。
彼女はテルコ。本名ではなく、その容姿からついたあだ名だ。彼女は髪の毛を一本残らず剃っており『てるてる坊主』のようだということで、テルコと呼ばれている。
彼女は昇降口のすぐ外に立ち、こちらに背を向けている。
(もったいなねえ・・・髪を伸ばせば可愛いのに・・・)
俺は彼女の頭を眺めつつ、そんなことを考える。
その時、彼女がこちらを振り向いた。
彼女は泣いていた。
彼女は袖で涙を拭き、タッと校門の方へ走っていく。
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