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掴神と争っている暇はない。
俺は廊下を走りながら窓側の隅へ寄り、目的の扉に向かって斜行しつつ肩から体当たりした。
扉は内側へ倒れ、俺は部屋へ転がり込む。
そこに見た光景は、今まさに黒板の中へ引き込まれようとしているテルコの姿であった。ボロボロのカツラ、涙と鼻水でクチャクチャの顔、手には必死の抵抗の証として黒いカーテンが握られている。
「まとえッ!!!」
テルコに意味が通じたか分からない。だが、これ以上言葉を発する余裕はなかった。
俺は一蹴りで机に飛び乗り、そこから黒板に向かって跳躍する。
眼下ではテルコがカーテンを肩ににまとい、黒い布がサッと床へ広がる。
ダンッ!
俺はその上に着地し、全身全霊をもって足裏、靴底を通して裾踏留めの呪術を施す。
強力無比の呪術によって呪縛されたテルコの身体は、もはや何人も、神でさえその場から動かすことはできない。
「テルコ、もう大丈夫だ!」
俺は荒い呼吸のまま叫ぶ。
「・・・・・・」
しかし、テルコはこちらを向こうとはしなかった。
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