お題【サンタクロース】1

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 後続の二頭が急に足を止めた。  振り返ってみると、明らかにどこかふてくされた表情をしている。    彼らは今年の栄誉に選ばれた新人だ。  幾日も厳しい訓練を続けているのだから、そろそろ愚痴の一つも言いたくなる頃合いだろう。私も身に覚えがある。    しかし彼らが口にしたのは愚痴ではなかった。 「俺ら、辞めます」 「なーんか思ってたより地味っつーか、ダルイっつーか」 「そんな、本番は明日だし、この務めがどれほど崇高な事か」 「だーかーら。そういうのもう古いって」  ユトリか? これが世に言うユトリ世代なのか?  さんざんに説得を試みたが私の手には負えず、やむなく彼らを主の元へ連れて行った。  主は事の次第を聞くと、近年またさらに膨れた腹を盛大に揺らして笑い、彼らと何か話し始めた。  当日彼らは任務をこなした。  そればかりか達成感に感動すら覚えているようだ。  どうやって彼らを説得したのか聞いてみると、主は下手くそなウインクをよこした。 「やらねば焼いて喰うと言ったんだよ」 「き、脅迫っ?」 「子供には飴と鞭じゃ。仕事を終えれば必ず得る物はある。それが飴じゃな」  サンタクロース。  伊達に長年子供の相手をしてきた男ではない。          おしまい。
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