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少し風変わりな子供だった。
ずり落ちそうな眼鏡ごしに私を見る。
「あなたへのプレゼントは誰がくれるの?」
「君達の喜ぶ顔が私への贈り物なのだよ」
納得しない様子の頭を撫で、私は立ち去ろうとした。
「僕がプレゼントを持っていく」
「それは楽しみだ」
去り際、その子が大きな声で言ったのを覚えている。
「必ず行くから。約束する」
頷いて応えはしたが、本気にはしなかった。私の存在は、大人になればいずれ風化していくものだからだ。寂寥はあるが、致し方ない。
突然の訪問者に私は驚きを隠せなかった。
目の前には痩せた長身の青年が一人。
ここは人には決して見つけられぬ場所なはず。
「二十年かかりましたよ、あなたを探すのに」
ずり落ちそうな眼鏡を直す仕草に、いつかの少年を思い出す。
「君は確か私に…」
青年の後ろから、朗らかに笑う女性と、子供が二人顔を覗かせた。
「妻と子供達です」
彼らは言った。
「メリークリスマス、サンタクロース」
彼らの笑顔は明るく、幸せに満ちあふれ、その輝きは私をも幸せに暖めた。
私は抑えきれぬ嬉しさに彼を抱きしめて言った。
「いいプレゼントだ。ありがとう。メリークリスマス」
―メリークリスマス―
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